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仙台高等裁判所 昭和25年(ナ)5号 判決

原告 相内村議会議長

被告 青森県選挙管理委員会

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の趣旨

原告訴訟代理人は「被告が青森縣北津軽郡相内村村議会解散の投票に関する訴外三和房美の訴願につき昭和二十四年三月十一日にした裁決を取り消す、訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求めた。

三、事  実

一、相内村選挙管理委員会は昭和二十三年九月二十六日訴外三和房美外五名を代表者として提出された同村々議会解散請求書を受理し、同年十一月一日その賛否投票を行つた結果、同日有効投票八百五十三票、無効投票四十三票、右有効投票中解散に賛成のもの四百四十四票、解散に反対のもの四百九票と公表した。

二、これにつき原告は同年十一月九日同村選挙管理委員会に対し異議の申立をしたところ、同委員会は同月十三日、嚴封されてあつた投票の包裝に破損した箇所があり、右は不正行爲によるものと認めるから開封再調することはできないとの理由で原告の異議申立を正当であるとの決定をした。

三、右決定に対して訴外三和房美から同年十一月十五日被告に訴願したところ、被告は昭和二十四年三月十一日、右訴願を理由ありとし、原告の異議申立についてした相内村選挙管理委員会の前記決定を取消す旨の裁決をした。

四、原告が昭和二十三年十一月九日相内村選挙管理委員会に対して提出した異議申立の内容は、「本件解散賛否投票中、賛成投票に算入されたものの中に反対と記載された投票が十票、無効とすべき投票が三十票あり、無効投票とされたものの中にも反対の投票として有効とさるべきものが三十票あるから、結局賛成投票は四百四票、反対投票四百四十九票となる。從つて村選挙管理委員会のした投票の結果の公表は無効である」というのであつた。

五、然るに被告は前記裁決にあたり、村選挙管理委員会から取寄せた投票が、果して昭和二十三年十一月一日に行われた相内村々議会解散の賛否投票であるかどうかを何等調査することなく、漫然取寄せた投票に基いて裁決をしたのであるから、右裁決は違法である。

六、のみならず、昭和二十三年九月二十六日三和房美外五名の代表者から相内村選挙管理委員会に対してした同村議会解散の請求は同村の選挙権者の三分の一に達しない請求者名簿を添えてされたものである。即ち当時同村選挙権者の総数は九百五十九名であつたから、その三分の一は三百十九名であつて、右請求者署名簿には総数三百七十六名の氏名が書いてあるけれども、そのうち二百五十五名は自署したものでなく、その他生年月日不明で選挙人名簿と照合し得ない者が三名あるから、これ等を除くと有効署名数は僅か百十八名に過ぎず、前示選挙権者総数の三分の一に達しないから右解散請求は無効である。

七、そこで原告は昭和二十三年十一月十一日相内村選挙管理委員会に対し口頭を以て前項と同趣旨の異議を申立て、同村選挙管理委員会は右の事項をも併せて審議の対象とし、前示決定をしたのである。然るに被告は前示裁決に当り、右の点につき何等審査しなかつたものであるから右裁決は違法である。

八、よつて被告のした前示裁決の取消を求めるというのである。

被告の答弁の要旨は、

原告主張の一乃至四の点は認める、五は否認する。投票の外裝が破損したのは、昭和二十三年十一月十二日村選挙管理委員会において原告の異議申立につき審議するため、関係係員が倉庫に保管中の投票函から包裝された投票を取出そうとして両手でこれを持上げた際それが函のふちに突きあたつたために嚴重に封印された包裝(薄い紙袋)の下腹部が斜に約七寸位破損したのである。被告は嚴重且愼重に調査の結果右は單に外裝の一部が破損したに過ぎず、その中にある投票及び到着番号札の封印には何等の異状がなく、且選挙会で決定した投票数とも合致し、昭和二十三年十一月一日に行われた相内村々議会解散の賛否投票であることを確認した上、その投票を審査したのである。その結果村選挙管理委員会において公表した解散賛成投票四百四十四票中には無効とすべきものは認められず、却つて反対投票とされたものの中に賛成投票が二票混入していたことを知り、また無効とされた投票中に賛成投票と認められるものが六票、反対投票と認められるものが十六票あつた。これ等を加除すると解散賛成投票四百五十二票、反対投票四百二十三票、無効投票二十一票となり、結局賛成投票は有効投票総数八百七十五票の過半数にあたるので、昭和二十三年十一月一日村選挙管理委員会の公表はその効力を失はないのである。六、七の事実は爭う。(当時相内村の選挙権者総数は九百四十四名である。)特に原告が六のような事実を異議申立の理由として主張したことは全くない。そもそも原告の本件異議申立は專ら村議会解散賛否投票の結果を爭の対象としたものであつて、村選挙管理委員会においてもこの点について審議決定したに止まり、被告も亦この範囲において審査し裁決したのである。原告も本件において当初から右六、七のような事実を主張したものでないことは本件訴状その他青森地方裁判所における第一、二回口頭弁論調書によつても明らかである。右のような主張を本訴において新に附加することは断じて許さるべきではない。というのである。(各立証省略)

四、理  由

一、原告主張の一乃至四の事実はいずれも本件当事者間に爭がない。

二、原告は被告において本件裁決をするに当り相内村選挙管理委員会から取り寄せた投票が果して昭和二十三年十一月一日に行われた同村々議会解散請求についての賛否投票であるかどうかを調査しないで裁決したと主張するけれども、かような事実を認めるに足る証拠がないばかりでなく、成立に爭のない乙第十、十一号証及び証人安保竜夫、三和三四郎の各証言によれば、被告が裁決に当り審査した投票は右議会解散の賛否投票に外ならないことを認めるに十分であるから、この点につき違法ありとする原告の主張は到底採用に價しない。しかも被告は右投票を審査して、被告主張のような投票の結果を認定して前記裁決をしたことは成立に爭のない甲第七号証により明らかであつて、被告の認定した右投票の結果に誤りがあることについては原告は本件において何等主張立証するところがないのである。從つて右賛否投票の結果に関する限り被告の裁決が違法なりとしてもこれが取消を求める原告の本訴請求は理由がない。

三、原告は本件議会解散賛否投票に対する異議の事由として六のような事実を口頭で申立て、相内村選挙管理委員会においても右の点を併せて審議決定したものであると主張するので案ずるに、本件賛否投票当時施行されていた地方自治法第八十五條第一項により準用される同法第六十六條第一項には地方議会の解散賛否投票に関する異議申立の方式について、公職選挙法第二百二條、第二百六條のような「文書で」という文言はなかつたが、しかし原告が村選挙管理委員会に対し口頭で右六のような趣旨の異議申立をしたことは、証人白川三吉のこの点に関する証言はこれを証人山内桃太郎の証言と対照するときまだ以て右事実を認めるに足らずその他これを認定するに足る證拠はない。のみならず成立に爭のない乙第四乃至七号証、前記乙第十、十一号証、証人山内桃太郎の証言等によれば、原告の異議申立は專ら前記解散の投票の結果に関する異議即ち解散賛否投票数の多寡を爭うにあつたものであつて、相内村選挙管理委員会における審議決定も右の問題以外に渉るものでなかつたことを認めるに十分である。されば被告が村選挙管理委員会のした前記決定に対する訴外三和房美の訴願について裁決するに当り、原告主張の六のような事項について審理することのなかつたのはむしろ当然のことであつて、これを違法なりとする原告の主張も採用し得ない。

四、選挙に関する爭訟において、選挙の効力に関するもの即ち所謂選挙爭訟と、当選の効力に関するもの即ち当選爭訟とを区別し、この両者はその性質を異にするものであると同様に、直接請求に関する爭訟についても解散又は解職の賛否投票の効力を爭うところの選挙爭訟に該当するものと、投票の結果を爭うところの当選爭訟にあたるものとの区別があることは、本件問題の当時施行されていた地方自治法第八十五條、第六十六條、同法施行令第百八條等によつて明らかである。前者は賛否投票の全部又は一部が無効なりとしてその効力を爭い、後者は賛否投票の手続は適法に行われたことを前提としてその投票の結果を爭うものであつて、両者は各別に異議、訴願及び訴訟の対象となるものであることはいうまでもない。從つて後者の爭訟において前者の主張、即ち、賛否投票の効力を爭うことは自家撞着であるばかりでなく、右爭訟の性質上許されないものと解するが相当である(最高裁昭和二三年(オ)第一五二号、昭和二四年三月十九日判決、判例集第三卷三号七四頁参照)。本件解散賛否投票に関する原告の異議申立(乙第四号証、この以外に原告が異議申立をしたことの認められないことは前述のとおり)は前示のように賛否投票の結果、反対投票が賛成投票よりも多数であるから、これと相反する村選挙管理委員会の公表は無効なりというのであつて、疑もなく賛否投票の結果を爭うものである。これに対する村選挙管理委員会の決定、訴外三和房美の訴願、被告の裁決等すべて右の点に関するものであり本訴も亦右の点に関する被告の裁決を不服としてこれが取消を求める趣旨で提起されたことは訴状の記載により明白である。然るに原告の前記六の主張は、要するに本件解散請求が無効なりとしてこれによる解散賛否投票の効力を爭うものに外ならず、かかる事由については、これにつき別に本件解散賛否投票の効力に関する異議、訴願の手続を経た上で出訴するなら格別、本訴提起後において右のような主張をすることはあたかも当選訴訟において選挙の効力を爭うと同様の関係に立つものであつて、前記理由により許されないものといわなければならない。

五、以上の次第であつて前示裁決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却すべきものとし、訴訟費用につき民事訴訟法第八十九條を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 谷本仙一郎 村木達夫 猪狩眞泰)

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